メスの犬を飼う上で切っても切り離せない問題が、「避妊手術」です。
「避妊手術」とは一体何でしょうか。
手術は必要なのか。
手術のメリットやデメリットとは。
この記事では「避妊手術」について詳しくご紹介します。
この手術をするかどうかを最終的に決めるのは飼い主です。
しっかりと学んで、判断の参考にしてもらえると幸いです。
目次
避妊手術
避妊手術とは何でしょうか。
詳しくご説明していきます。
避妊手術とは
メス犬が妊娠しないように卵巣だけ、または、卵巣と子宮の両方を摘出する手術のこと。
ペットショップで犬を買う場合は特に手術について触れられることはありませんが、
メリット
避妊手術を行うことで得られるメリットは様々あります。
①望まない妊娠を回避できる
万が一望まない出産をした場合、生まれた子犬達を飼うことができれば問題はありません。
しかし、できない場合は引き取り手を探さなければいけません。
もし、引き取り手がいない時、子犬達はどうなるのでしょうか?
望まない妊娠を避けられる環境になく、子犬が産まれた場合に責任を取れないのであれば、避妊手術するべきです。
②発情時のストレス・興奮を予防・軽減できる
避妊手術を行うと、発情することがなくなります。
そうすると、発情による体調の変化もなくなるため、ストレスと興奮を予防・軽減できます。
また、発情によって気性が荒くなることもなくなり、問題行動が減少します。
③ヒートによるトラブルが無くなる
ヒート中は出血を伴う為、血が滴ってしまいます。
愛犬のお気に入りのクッションやカーペット、ベッドやおもちゃに血が染みついてしまうことを防げます。
※ヒート用のオムツ・マナーパンツを使うことで、避妊手術せずとも対策はできます。
④病気の予防になる
避妊手術を受けることで、以下の病気を防げるといわれています。
【子宮蓄膿症】
細菌が子宮内で増殖することで膿が溜まってしまう病気のこと。
発情期になり、細菌感染に対する防御が弱くなることが原因となります。
主に出産経験のない恒例のメス犬に見られます。
【乳腺腫瘍】
乳腺にできる腫瘍のこと。
この腫瘍のうちの半分が悪性、つまり、ガンです。
手術するタイミングによってこの病気の発生率が大きく変化します。
手術するタイミング:発症率
初回発情前:0.05%
1回発情後:6~8%
2回発情後:25% (2回~4回)
発情の回数を重ねるごとに発症率は高くなっていきます(ある一定程度まで)。
年齢を重ねてからの手術だと術後の発症率に変化はないとされています。
デメリット・リスク
①子供がつくれなくなる
当たり前ですが、生殖器を取り除くため、手術後は子供を作れません。
子供を産ませたいと考えているのであれば、この手術を受けないようにしましょう。
②太りやすくなる
手術の影響により、活動量が減ることで、基礎代謝量が低下します。
手術前と同じ量の食事を与えてしまうと肥満になります。
その為、低カロリー食に替えたり、餌の量を考えたりと、カロリーコントロールが難しくなります。
また、肥満になると病気にかかりやすくなってしまう点も挙げられます。
③性格が変わる
正確な結論は未だに出ていませんが、報告例としては多数挙げられているようです。
攻撃性が高くなる、以前より甘えるようになったなどなど。
④全身麻酔によるリスク
これが最も大きいデメリットとされます。
避妊手術する場合は、全身麻酔をかけます。
この全身麻酔、麻酔薬が脳にどう作用するのかという詳しいメカニズムは現代の医療でも未だに解明されていないのです。
全身麻酔を行うと以下のリスクが発生します。
- 血圧低下の症状が出る(0.1%~0.2%)
- 短頭種で、術後気管チューブを外した時に呼吸困難になる(ごく低確率)
- 麻酔から目覚めない
- 後遺症として肝臓への負担がある
- 高齢や生後期間が短く体力が低いと、麻酔をかけるだけでも命がけとなる
もちろん、医師はこれらの可能性を踏まえて事前に検査を行います。
異常が見られる場合には手術ができないことも教えてくれます。
ただ、どれだけ健康でも全身麻酔のリスクが0になることはありません。
⑤病気の発症
手術をすることで発生する病気もあります。
正確な証明はされていませんが、以下の病気は手術することによって発症する可能性があると言われています。
- 尿失禁
- 皮膚病
- 脱毛症(または、毛が生えにくい)
- 術後合併症
必ず発症するというわけではありません。
中には、避妊手術との関係を否定されているものもありますが、証明されていません。
⑥手術による影響
手術は体力を使うものです。
リスクがある以上、手術で死亡する可能性もあります。
可能性は限りなく低いとしても、事実、手術による死亡例も0ではありません。
手術を検討する以上、避けては通れないリスクです。
避妊手術をするタイミング
生後6ヶ月前後がベストとよく言われています。
理由はメリットで説明した【乳腺腫瘍】の発生率を低下させるためです。
順を追って説明します。
手術のタイミングを計るポイントは以下2点です。
- 初回発情を迎える前
- 手術・麻酔に耐えられること
個体差はあるものの、メス犬の初回発情は生後6ヶ月~12ヶ月頃に来ます。
初回発情前に避妊手術をすれば、【乳腺腫瘍】の発症率を0.05%にまで低下させられます。
ただし、生まれて間もないと手術や麻酔に耐えられないため、生後3ヶ月未満は手術すべきでないとされています。
その為、初回発情を迎える前の生後6ヶ月頃までに手術するのがベストとされています。
また、【乳腺腫瘍】を前提に考えた場合、発情は2回目を迎えるまでにした方がよいでしょう。
年齢を重ねてからの避妊手術
上記で述べた2回目の発情を既に過ぎて避妊手術を行う場合について。
高齢でない限り、避妊手術のタイミングが遅いということはありません。
もちろん【乳腺腫瘍】に関するメリットはほとんどなくなりますが、他のメリットが無くなることはありません。
特に、出産を望まない場合に関して、環境づくりが難しいと判断すれば手術を行うべきと言えます。
もちろん、事前に医師と相談し、体力的に問題がないか、身体に異常がないかを十分に相談した上で判断してください。
避妊手術はどこでできる?
一般的には動物病院で行います。
ただし、設備の有無も関係してくるため、事前に電話で可能かを聞いておきましょう。
また、手術を行う病院の選定は、信頼できる病院や医師、かかりつけの病院を選びましょう。
避妊手術の費用
手術費用は約2~5万円程度
と言われていますが、犬種や犬のサイズ、年齢によって変化します。
また、病院によっても変わってくるため、必ず事前に確認しておきましょう。
補助金が出る自治体も
犬の避妊手術に補助金を出してくれる自治体もあります。
ただし、かなり少数の為、該当地域でない可能性が高いです。
事前にホームページや電話で確認することが大切です。
もし、該当したら嬉しい程度で心に留めておきましょう。
避妊手術は必要?
避妊手術をする・しないに正解はありません。
これまで様々なメリット・デメリットについて説明してきました。
これらの情報をもとに選ぶのは飼い主です。
どうすれば愛犬の幸せにつながるかを考えて決断してください。
一人の飼い主として
一人の飼い主として私見を記載しておきます。
あくまで一意見として見てくださいね。
私は避妊手術に反対しています。
理由は、子宮も卵巣も本来は身体にあるべきものだからです。
まず前提として、私はメス犬を飼っています。
また、愛犬に子供を産ませるつもりはありません。
その上で、手術をするメリットを理解していますし、病気の発症率をさげることができる点は特に合理的とも思います。
避妊手術をすることも愛犬の幸せを考えた結果ということは理解しています。
ただ、そのために本来身体にあるべき器官を取り除くのは人間のエゴだと考えます。
「子供を産ませないのであれば、子宮と卵巣を取ってしまおう。
そうすれば病気になる可能性がぐっと下がるよね。」
犬も生きていて、一人の家族です。
その家族の将来ことを考えて、家族の器官を取り出す。
人間では絶対にしないであろう選択を犬ではする、ということにどうしても同意できません。
その為、悩みに悩んで、3人の獣医に避妊手術について相談しました。
驚くことに全員が同様の回答でした。
「避妊手術して防げる病気や手術するメリットはあるけれど、手術をすることで発症する病気があり、手術するデメリットがある。だからどちらがいいとは言えない。」
そして、「よく考えて決めてください。」とも。
更に悩み、妻と相談し、やはり手術しない結論に至りました。
ですが、同時に誓ったことがあります。
望まない妊娠が絶対にない環境づくりの徹底です。
昨今問題になっている多頭崩壊。
犬が出産してしまい、結果飼えませんでしたという無責任な飼い主がいることに腹が立ちます。
これだけは絶対にあってはならないことだと考えています。
話をまとめると
- 避妊手術をする・しないに正解はない
- 私は避妊手術に反対である
- 避妊手術は飼い主が愛犬の幸せを考えて判断すべき
- 避妊手術しない場合は、望まない妊娠をしない環境を作る
- または、しっかりと考え、計画した上で出産させる
ということになります。
人によってさまざまな意見があることは承知しています。
私はその意見を否定するつもりは一切ありません。
これはあくまで私の一意見でしかないので、皆さんが判断する上で、一つの参考になれば幸いです。
最後に
いかがでしたか?
避妊手術についてほんの少しでもご理解いただけたら幸いです。
避妊手術はメスの犬を飼う上で避けては通れない問題です。
飼い主のみなさんが愛犬の幸せを願って判断してくれることを願っています。